暑い日が続くと、押し入れや物置から何年も使っている扇風機を出す家庭も多いでしょう。「まだ動くから大丈夫」「羽根のほこりを取れば今年も使える」と思いがちですが、見た目に問題がなくても、内部の電気部品は少しずつ劣化します。
一方で、古いという理由だけで直ちに火災が起きるわけではありません。大切なのは、製造年や使用期間を確かめたうえで、回転の乱れ、異音、焦げ臭さ、コードの傷みなど、これまでになかった変化を見逃さないことです。
消費者庁は2026年8月12日、50年以上使われた扇風機の火災を公表し、長期使用製品への注意を呼びかけました。この記事では、その発表内容を踏まえ、古い扇風機で火災が起きる仕組み、今すぐ確認したい7つのサイン、「設計上の標準使用期間」の意味、安全な使い方と処分方法をわかりやすく整理します。
先に結論
使用年数だけで危険か安全かを断定することはできません。ただし、異音、異臭、異常な発熱、回転の遅れ、コードの傷みなどが一つでもあれば使用を続けず、スイッチを切って電源プラグを抜き、販売店やメーカーへ相談してください。「掃除をしたら直ったように見える」という場合も、内部の劣化は確認できません。
消費者庁が8月12日に注意を呼びかけた理由

消費者庁が2026年8月12日に公表した重大製品事故の中には、神奈川県で扇風機と周辺を焼損した火災が含まれていました。事故は7月24日に発生し、扇風機は製造から50年以上経過していたとされています。
ただし、公表時点では、扇風機そのものに原因があったのか、ほかの要因が関係したのかを含めて調査中です。「50年以上使った扇風機が原因で火災になった」と確定したわけではない点には注意が必要です。
それでも消費者庁が長期使用の扇風機について改めて注意を促したのは、古い製品ではモーター、電源コード、コンデンサーなどの電気部品が経年劣化し、出火につながるおそれがあるためです。扇風機は毎年同じ季節に使うため、保管していた期間を意識しにくく、「買ってから何年たったのか分からない」という家庭も少なくありません。
今回の発表をきっかけに確認したいのは、50年という数字だけではありません。10年、15年と使っている製品でも、使用環境や保管状態、1日あたりの運転時間によって劣化の進み方は異なります。まずは本体表示と取扱説明書を確認し、使用前と使用中の変化を点検することが重要です。
古い扇風機から火災が起きるのはなぜ?
扇風機の内部には、羽根を回すモーター、電流を調整する部品、配線、コンデンサーなどがあります。長期間の使用や保管を重ねると、絶縁材料が劣化したり、配線の接続部分が傷んだり、回転部分の抵抗が大きくなったりすることがあります。
たとえば、羽根が正常に回らないのにモーターへ電気が流れ続ければ、内部に熱がこもる可能性があります。コードの被覆が破れていたり、内部で断線しかけていたりすると、接触不良や異常発熱の原因になります。コンデンサーなどの部品も、長い年月の間に性能が低下することがあります。
さらに、プラグ周辺にほこりと湿気がたまると、電気の通り道ができて発火する「トラッキング現象」が起こる場合があります。これは扇風機の年数だけに限った問題ではなく、コンセントへ長期間差したままにする家電全般で注意したい現象です。
つまり、火災の危険は「古いから突然燃える」という単純なものではありません。部品の劣化、コードへの負担、ほこり、湿気、異常があるまま運転を続けることなどが重なって高まります。外側を見ただけでは内部の状態を判断できないため、製品が発している小さな変化が大切な手がかりになります。
今すぐ確認したい7つの異常サイン
1.スイッチを入れても羽根が回らないことがある
一度で動かず、何回か操作すると回る状態は、単なる気まぐれではありません。羽根が止まっているのに通電していると、モーターが発熱するおそれがあります。手で羽根を押して回し始める、コードを動かして再始動させるといった使い方はやめましょう。
2.以前より回転が遅い、または回転が不規則
同じ風量設定なのに風が弱い、回転速度が安定しない、途中で止まりそうになるといった変化も点検が必要なサインです。羽根やガードの汚れが風量を落としている場合はありますが、清掃しても改善しないときは、モーターや内部部品の不具合が考えられます。
3.異音や大きな振動がする
「ブーン」という運転音が以前より大きい、カラカラ、ジー、ガリガリといった聞き慣れない音がする、本体やガードが強く振動する場合は使用を中止します。羽根の取り付け不良だけでなく、軸やモーターなどに問題がある可能性もあるため、自分で分解して直そうとしないでください。
4.焦げ臭い、電気部品が焼けたようなにおいがする
焦げたプラスチックや電気配線のようなにおいは、すぐに使用を中止すべきサインです。「少しだけだから」「しばらく動かせば消えるかもしれない」と様子を見て運転を続けてはいけません。煙が見えなくても、内部で異常発熱している可能性があります。
5.モーター部分が異常に熱い
運転中のモーター部分が多少温かくなることはあります。しかし、触れ続けるのが難しいほど熱い、以前より明らかに温度が上がった、熱と同時ににおいや音の変化がある場合は正常と決めつけないでください。
「何度までなら安全」と家庭で一律に判断することはできません。機種や運転条件によって温度が異なるため、取扱説明書を確認し、異常だと感じたら運転を止めてメーカーや販売店に相談するのが安全です。
6.電源コードが傷んでいる、触ると動作が変わる
コードが折れ曲がっている、被覆が破れている、家具の下敷きになっていた、本体やプラグの付け根が変形している場合は使用しないでください。コードに触れると羽根が回ったり止まったりする状態は、内部断線や接触不良の可能性があります。
コードやプラグが触れられないほど熱くなる場合も使用中止が必要です。ビニールテープで巻いて使い続けたり、市販コードを自己判断でつなぎ直したりするのは危険です。
7.プラグが変形している、コンセントでぐらつく
プラグの刃が曲がっている、変色している、差し込んでもぐらつく、プラグ周辺にほこりがたまっているといった状態も見逃せません。接触不良やトラッキング現象による発熱・発火につながることがあります。
プラグだけでなく、壁側のコンセントが緩んでいる可能性もあります。別のコンセントへ差し替えて使い続ける前に、製品と設備のどちらに問題があるか、販売店や電気工事の専門業者へ確認しましょう。

「設計上の標準使用期間」とは?
扇風機は「長期使用製品安全表示制度」の対象です。2009年4月1日以降に製造された対象製品には、原則として本体に「製造年」「設計上の標準使用期間」「経年劣化についての注意喚起」が表示されています。表示場所は本体の背面や底面、モーター付近など機種によって異なるため、取扱説明書も確認してください。
設計上の標準使用期間とは、運転時間、温度、湿度など、JISで定められた標準的な使用条件を前提に、製造年から安全上支障なく使用できる標準的な期間を示すものです。扇風機では10年と表示されている製品が多く見られますが、すべての製品が必ず10年とは限りません。手元の製品表示を優先してください。
ここで誤解しやすい点が二つあります。まず、この期間は無償保証期間ではありません。期間内に故障しないことを保証する数字でもありません。次に、期間を1日過ぎたら直ちに使えなくなる「使用期限」でもありません。
ただし、標準使用期間を超えると経年劣化による事故のリスクが高まるおそれがあります。異常がなくても、買い替えやメーカーへの相談を考える節目として使うのが現実的です。表示が見つからない古い製品は、型番を確認してメーカーへ製造時期を問い合わせるか、購入時期が分からないほど古ければ買い替えも検討しましょう。
ほこりを掃除すれば使い続けても大丈夫?
定期的な清掃は事故予防に役立ちます。ガードや羽根にほこりが厚く付着すると風量が落ち、モーター周辺の通気を妨げることがあります。電源プラグ周辺のほこりを取り除くことも大切です。
ただし、掃除で改善できるのは外から取り除ける汚れです。モーターの絶縁劣化、内部配線の傷み、コンデンサーの劣化、コード内部の断線などは、表面をきれいにしても元には戻りません。異音や焦げ臭さ、回転不良が出ていた製品を「ほこりを取ったら動いた」という理由だけで再使用するのは避けましょう。
清掃するときは必ず電源プラグを抜き、羽根が完全に止まってから行います。本体やモーター部分へ水や洗剤を直接かけず、分解できる範囲と手入れ方法は取扱説明書に従ってください。内部の修理やコード交換は自分で行わず、メーカーや販売店へ相談します。
この場合はすぐに使用を中止
- 焦げ臭いにおい、煙、火花が出た
- 羽根が回らない、回転が遅い、動きが不規則
- 異常な音や強い振動がある
- モーター、コード、プラグが異常に熱い
- コードの破損、変形、接触不良がある
- 水にぬれた、倒して強い衝撃を与えた
異常に気づいたらスイッチを切り、安全に行える状況で電源プラグをコンセントから抜きます。煙や火が出ている、周囲へ燃え広がりそう、プラグへ近づくのが危険という場合は、無理に触らずその場から離れて119番通報してください。通電中の電気製品へ水をかけると感電する危険があるため、自己判断で水をかけないことも重要です。
扇風機を安全に使うための習慣
- シーズン最初の使用前に、製造年、コード、プラグ、羽根、ガードを点検する
- カーテン、布団、衣類、紙など燃えやすい物を近づけない
- 不安定な台や水がかかる場所に置かない
- コードを束ねたまま使わず、家具で踏んだり強く曲げたりしない
- プラグを抜くときはコードではなくプラグ本体を持つ
- 運転中に異音、異臭、発熱、回転の変化がないか確認する
- 使用しないときはスイッチだけで済ませず、電源プラグを抜く
特に古い扇風機では、羽根が回っていないため電源が切れていると思い込んでも、実際には通電している場合があります。消費者庁も、使用していないときはプラグを抜くよう呼びかけています。長期間保管する際は、清掃後によく乾かし、コードへ無理な折り目をつけず、湿気の少ない場所に保管しましょう。
また、扇風機は室内の空気を動かす機器であり、室温そのものを大きく下げるものではありません。猛暑日に室温が高いときは、扇風機だけで我慢せず、エアコンを適切に併用して熱中症を防ぐことも忘れないでください。
買い替え・処分するときの注意点
設計上の標準使用期間を超えている、異常サインがある、製造年が分からないほど古い、メーカーが使用中止を呼びかけている場合は、買い替えを具体的に検討しましょう。異常のある製品は、家族が誤って再使用しないよう、プラグを抜いて「使用禁止」と分かる状態にしておくと安心です。
購入前には、PSEマーク、転倒しにくさ、タイマー、チャイルドロックなど、使う人と置き場所に合う安全性を確認します。価格や風量だけでなく、本体表示が読みやすいか、手入れしやすいか、メーカーの相談窓口があるかも選択材料になります。
家庭用の一般的な扇風機は、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機を対象とする家電リサイクル法の「家電4品目」には含まれません。一方、自治体によって粗大ごみ、不燃ごみ、小型家電回収など区分が異なるため、住んでいる市区町村のごみ分別ページで確認してください。
無許可の不用品回収業者へ安易に渡すと、不適正処理や高額請求などの問題につながるおそれがあります。コードレス扇風機やハンディファンなど充電池を内蔵する製品は、通常の扇風機と処分方法が異なる場合があるため、自治体や販売店の案内に従いましょう。
よくある質問

扇風機は何年くらい使えますか?
一律の寿命はありません。本体に記載された「設計上の標準使用期間」が判断材料になり、10年とする製品が多くあります。ただし、使用頻度や環境によって劣化の進み方は変わります。表示期間内でも異常があれば、すぐに使用を中止してください。
10年以上使っていても異常がなければ大丈夫ですか?
現在動いていることだけで、内部まで安全とは判断できません。標準使用期間を超えている場合は、毎回の点検を続けるだけでなく、メーカーへの相談や買い替えを検討してください。特に製造年が分からない製品、長期間保管していた製品は慎重に確認しましょう。
モーターが熱くなるのは故障ですか?
運転中に多少温かくなることはありますが、触れ続けられないほど熱い、以前より明らかに熱い、焦げ臭さや異音を伴う場合は異常の可能性があります。温度だけで自己判断せず、停止して取扱説明書やメーカー窓口を確認してください。
電源コードが少し熱いだけなら使えますか?
触れられないほどの熱、変色、変形、焦げたにおい、触ると運転が不安定になる状態は使用中止のサインです。原因が製品側かコンセント側か判断できない場合も、無理に使い続けず専門業者へ相談しましょう。
使わないときは毎回コンセントを抜くべきですか?
消費者庁は、扇風機を使用していないときは電源プラグを抜くよう案内しています。特に古い製品では、羽根が止まっていても通電している可能性があります。抜く際はコードを引っ張らず、プラグ本体を持ってください。
まとめ
古い扇風機がすべて危険というわけではありません。しかし、長期間使った製品ではモーター、コード、コンデンサーなどが劣化し、異常発熱や出火につながるおそれがあります。
回転が遅い、時々止まる、異音や振動がある、焦げ臭い、モーターやコードが異常に熱い、コードやプラグが傷んでいるといった変化があれば、すぐに使用を中止してください。掃除をして動くようになっても、内部の劣化が解消したとは限りません。
本体の製造年と設計上の標準使用期間を確認し、期間を超えている製品は買い替えを考える節目にしましょう。毎年使う身近な家電だからこそ、「まだ動く」ではなく「安全に動いているか」という視点で点検することが大切です。
参考情報
- 消費者庁「消費生活用製品の重大製品事故:長期使用の扇風機についての注意喚起」(2026年8月12日)
- 経済産業省「長期使用製品安全表示制度」
- NITE「エアコン・扇風機の事故」注意喚起資料
- 日本電機工業会「長期使用の家電製品」
- 政府広報オンライン「家電4品目は正しい処分を」
※本記事は2026年8月13日時点の公表情報をもとに作成しています。事故原因は調査の進展により更新される場合があります。製品ごとの使用方法や点検については、取扱説明書とメーカーの案内を優先してください。
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