お盆休みに、家族や友人と海水浴や川遊び、河原でのバーベキューを計画している方も多いでしょう。暑い日に水辺で飲む冷たいビールは魅力的ですが、「少ししか飲んでいないから」「泳ぎには自信があるから」と、そのまま水へ入るのは危険です。
海上保安庁は、飲酒によって判断力や集中力、運動能力が低下し、本来の泳力を発揮できなくなると注意を呼びかけています。酔っている本人は危険を小さく見積もりやすいため、「自分では大丈夫だと思っている」こと自体が安全の根拠にはなりません。
また、お盆の水辺には飲酒以外の危険も重なります。帰省や長距離運転による睡眠不足、強い日差しによる疲労、混雑、台風から届くうねり、上流の雨による川の急な増水などです。普段は穏やかに見える場所でも、条件が変われば短時間で危険な場所になります。
この記事では、「飲んだら泳がない」と言われる理由と、お盆の海・川で水難事故を防ぐために確認したい7つの注意点をまとめます。出発前だけでなく、同行者全員で現地でも確認してください。
この記事で分かること
- 飲酒後の遊泳で事故の危険が高まる理由
- お盆の海・川で特に注意したい条件
- 子どもの見守りとライフジャケットのポイント
- 離岸流や川の増水に遭ったときの対応
- 溺れている人を見つけたときの通報先と救助方法
「飲んだら泳がない」はなぜ?

飲酒後の遊泳が危険なのは、単に酔って足元がふらつくからではありません。水辺で必要になる「状況を見極める力」「体を思いどおりに動かす力」「異変に気づいて早く行動する力」が、同時に低下するためです。
判断力と注意力が落ちる
アルコールが入ると、「この程度の波なら平気」「対岸まで行けそう」「子どもをすぐ助けられる」と、危険を軽く考えやすくなります。遊泳禁止の表示を無視する、深い場所へ進む、悪ふざけをするなど、普段なら避ける行動につながることもあります。
海や川はプールと違い、波、流れ、水深、水温が一定ではありません。一瞬の判断の遅れが、岸から離される、足を取られる、体力を使い切るといった事態につながります。
運動能力と泳力が低下する
飲酒すると、バランス感覚や反応速度、筋肉を正確に動かす力が低下します。砂浜やぬれた岩で転倒しやすくなるだけでなく、水中では呼吸と手足の動きを合わせにくくなります。波をかぶったときに姿勢を戻す、流れから抜けるといった動作も遅れます。
「酒に強い人」でも影響がなくなるわけではありません。顔が赤くならない、会話が普通にできるという状態と、安全に泳げる状態は別です。
体温変化や疲労に気づきにくい
水に入ると陸上より体温を奪われます。一方、炎天下では脱水や熱中症にも注意が必要です。飲酒後は暑さ、寒さ、疲労など身体からのサインを正しく捉えにくくなり、休むべきタイミングを逃すおそれがあります。
アルコール飲料を水分補給の代わりにすることもできません。水やお茶を一緒に飲んでも、すでに飲んだアルコールの影響が帳消しになるわけではありません。
最新統計から見る海・川の水難
警察庁が2026年6月に公表した「令和7年における水難の概況等」によると、2025年の水難発生件数は1,426件、水難者は1,599人、そのうち死者・行方不明者は760人でした。
死者・行方不明者を場所別に見ると、海が352人で46.3%、河川が282人で37.1%です。中学生以下の死者・行方不明者27人についても、海12人、河川12人でした。
これらは海水浴や川遊びだけでなく、釣りなどを含む年間の水難全体の数字です。そのため「お盆の遊泳事故だけの人数」ではありません。ただ、海と川が命に関わる水難の主要な場所であることは読み取れます。楽しいレジャーほど、事前のルールを曖昧にしないことが大切です。
お盆の海・川で水難事故を防ぐ7つの注意点
1.飲んだ人は水に入らない・救助役にもならない
最も分かりやすく、例外を作らないルールは「飲んだら泳がない、泳ぐなら飲まない」です。ビール1杯だけ、食事から時間がたった、足をつけるだけという自己判断も避けましょう。波打ち際や浅瀬でも、転倒したり急な流れに足を取られたりすることがあります。
飲酒した日は遊泳を終えた後にお酒を楽しむ順番にすると、判断に迷いません。グループでバーベキューをする場合は、飲まない大人をあらかじめ決めてください。その人は子どもの見守り、車の運転、緊急連絡を担当します。
特に避けたいのは、飲酒した大人が溺れた人を助けるため水へ飛び込むことです。救助する側まで流される二次事故につながります。泳ぎに自信があっても、まず監視員へ知らせ、浮く物を投げ、通報してください。
2.開設された海水浴場・管理された場所を選ぶ
見た目がきれいで静かな海岸でも、安全に泳げるとは限りません。海水浴場として開設されていない場所は、監視員や救護所がなく、遊泳区域の設定や海底の確認が行われていないことがあります。
お盆前後は、海水浴場によって開設期間や監視時間が異なります。現地へ行く前に自治体や海水浴場の公式サイトで、開設状況、遊泳可否、監視員の配置、駐車場、禁止事項を確認しましょう。現地で赤旗や遊泳禁止表示が出ている場合は、晴れていても水へ入ってはいけません。
川では、過去に事故が起きた場所、堰や落ち込みの近く、中州、岩場、急に深くなる場所を避けます。「地元の人が遊んでいる」「昨年は大丈夫だった」という情報より、当日の水位と管理者の案内を優先してください。
3.現地の天気だけでなく、上流と沖の状況を見る
川遊びでは、その場が晴れていても上流で強い雨が降ると急に増水することがあります。水が濁る、落ち葉や枝が増える、水位が上がる、流れが速くなる、雨や雷の音が近づくといった変化があれば、荷物より先に全員が水辺から離れてください。
中州は水位が上がると帰り道がなくなることがあります。河原でテントやバーベキュー用品を広げる前に、退避経路と高い場所を確認しておきましょう。国土交通省「川の防災情報」や気象庁の雨雲情報で、現在地だけでなく上流域の雨量と水位を見ることが重要です。
海では、台風が遠くにあっても、うねりや高波が届く場合があります。風向きによっては浮き輪が沖へ流されます。波浪注意報、台風情報、海水浴場の旗、監視員の指示を確認し、天候が悪化する予報なら計画を変更しましょう。
4.体に合うライフジャケットを正しく着ける
ライフジャケットは、持って行くだけでは役に立ちません。体格に合ったサイズを選び、前のファスナーやバックル、股ベルトがある製品はすべて正しく装着します。大きすぎる物は、水に落ちたときに体だけが下へ抜けるおそれがあります。
子ども用は年齢表示だけで決めず、対応体重や胸囲を確認してください。浮き輪、アームリング、ビーチボールなどの遊具は、救命用のライフジャケットの代わりにはなりません。風で流されたり、体から外れたりする可能性があります。
川遊び、釣り、ボート、SUPなどでは大人も着用しましょう。浅く見える川でも、水面下に深みがあり、流れが複雑な場所があります。ライフジャケットを着けていても危険区域へ入ってよいわけではありませんが、突然落水した際に呼吸を確保する助けになります。
5.子どもは「見ているつもり」にせず、担当を決める

複数の大人がいると、「誰かが見ているだろう」と注意が分散しがちです。子どもを見る担当者を時間ごとに決め、スマートフォン、会話、バーベキューの準備と同時に行わないようにします。
幼児や泳げない子どもにはライフジャケットを着用させ、手を伸ばせば届く距離を保ちます。波打ち際だから、足首までだからと油断せず、海や川の方向へ背を向けないことも大切です。
派手な色の水着や帽子は見つけやすくなりますが、それだけで安全になるわけではありません。到着したら「ここから先へ行かない」「一人で水へ入らない」「浮き具が流されても追わない」「迷ったら監視員の所へ行く」と、子どもにも短い言葉で伝えましょう。
6.海の離岸流と川の流れの違いを知る
海では、岸から沖へ向かう強い流れ「離岸流」に注意が必要です。海上保安庁によると、離岸流は泳ぎが得意な人でも逆らうことが難しく、幅は約10~30メートルとされています。
沖へ流されたときは、岸へ一直線に泳いで流れに逆らうと体力を失います。慌てず助けを呼び、泳げる場合は海岸と平行に移動して離岸流から抜けます。無理に泳げないときは、浮力を確保して楽な姿勢で浮き、救助を待つことも選択肢です。
一方、川では流れが岸と平行とは限らず、岩や川底の地形、堰の周辺で複雑になります。海の離岸流への対処をそのまま当てはめてはいけません。そもそも流れの速い場所へ入らず、増水の兆候があれば早めに岸から離れることが基本です。
7.事故時は飛び込まず、通報・浮力・位置確認を優先する
溺れている人を見つけたら、大声で周囲と監視員へ知らせます。海の事故は海上保安庁の118番、川や湖、プールなどで消防・救急が必要な場合は119番へ通報します。場所が分かりにくい場合に備え、海水浴場名、橋の名前、駐車場、近くの看板、GPSの位置情報を確認してください。
救助の訓練を受けていない人が泳いで近づくと、パニック状態の人につかまれ、二人とも溺れる危険があります。岸から届く範囲なら、浮き輪、ライフジャケット、空のふた付きペットボトルを入れた袋など、浮力になる物を投げます。ロープや長い棒を使う場合も、自分が引き込まれない安全な姿勢を取ってください。
救助された人に反応や普段どおりの呼吸がない場合は、119番の通信指令員の案内に従い、心肺蘇生とAEDの使用を始めます。呼吸が戻っても水を吸い込んでいる可能性があるため、外見だけで「もう大丈夫」と判断せず、救急隊へ状況を伝えましょう。
出発前と現地で使えるチェックリスト
- 海水浴場の開設状況と遊泳可否を公式情報で確認した
- 当日の天気、波浪、雷、台風情報を確認した
- 川では上流の雨量と水位も確認した
- 全員分の体格に合ったライフジャケットを用意した
- 子どもを見守る、飲酒しない大人を決めた
- 体調不良、睡眠不足、二日酔いの人は水へ入らない
- 遊泳後に飲酒する順番を共有した
- 退避場所、監視員、救護所、AEDの位置を確認した
- スマートフォンを防水ケースに入れ、連絡手段を確保した
- 海は118番、救急・消防は119番と全員で確認した
よくある質問

ビールを1杯飲んだだけなら、少し休めば泳げますか?
飲酒量、体格、体調、食事、時間によってアルコールの影響は異なり、「何時間休めば必ず安全」と一律には判断できません。水やコーヒーを飲む、汗をかく、仮眠を取るといった方法で急に影響が消えるわけでもありません。飲酒した日は水へ入らず、遊泳を終えてから飲むのが安全です。
浮き輪があればライフジャケットは不要ですか?
浮き輪は遊具であり、救命用のライフジャケットとは役割が異なります。手が離れる、風に流される、破損するといった可能性があります。特に子ども、泳げない人、釣りやボートをする人は、体格と用途に合ったライフジャケットを正しく着用してください。
海で沖へ流されたら、すぐ岸へ向かって泳ぐべきですか?
離岸流に入っている場合、岸へ向かって流れに逆らうと体力を消耗します。落ち着いて助けを呼び、泳げる場合は海岸と平行に泳いで流れから抜けます。泳ぎ続けるのが難しいときは、浮力を確保して浮き、救助を待ちます。
川で雨が降っていなければ増水の心配はありませんか?
現在地が晴れていても、上流の雨やダムの放流などで水位が変わることがあります。上流を含む雨雲と水位を確認し、水の濁り、枝や落ち葉の増加、流れの変化、放流警報などがあれば直ちに川から離れてください。
溺れた人を見つけたとき、泳げる大人が助けに行くべきですか?
訓練を受けていない人が飛び込むと、救助者も溺れる二次事故のおそれがあります。まず周囲と監視員へ知らせ、海では118番、救急・消防は119番へ通報し、岸から浮く物を渡す方法を優先してください。
まとめ
「飲んだら泳がない」のは、アルコールによって判断力、注意力、運動能力が低下し、本来の泳力を発揮できなくなるためです。酒に強い、少量しか飲んでいない、浅い場所にしか入らないという条件も、安全を保証しません。
お盆の海・川では、飲酒に加えて疲労、混雑、台風のうねり、離岸流、上流の雨による急な増水が重なることがあります。開設された場所を選ぶ、天気と水位を確認する、ライフジャケットを正しく着ける、子どもの見守り担当を決めるといった準備が重要です。
そして、事故を見つけても安易に飛び込まないでください。通報し、監視員や周囲へ知らせ、浮力になる物を渡すことが、救助する側の命を守ることにもつながります。楽しい思い出にするために、グループ全員で「飲むのは泳ぎ終わってから」を最初に決めておきましょう。
参考情報
※本記事は2026年8月9日時点の公表情報をもとに作成しています。天候、遊泳可否、施設の開設状況は当日の自治体・施設・監視員の案内を優先してください。
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