モバイルバッテリーが膨らんだら使っていい?発火の前兆と正しい捨て方を解説

家電・暮らしの安全

引き出しから久しぶりにモバイルバッテリーを取り出したら、本体が少し丸くなっている。机の上に置くと以前のように平らにならない。ケースの合わせ目にすき間ができている――。

そんな状態を見つけても、「まだ充電できるから大丈夫」「完全に壊れるまでは使えるのでは?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、モバイルバッテリーの膨張は、使用を続けてよいか迷う段階ではなく、使用・充電を中止すべき異常の一つです。多くのモバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、劣化や高温、強い衝撃などによって内部に異常が起きると、発熱・発煙・発火につながるおそれがあります。

NITE(製品評価技術基盤機構)が2026年に公表した情報では、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件あり、製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多くなっています。

特に注意したいのは、膨らんだバッテリーを「捨てる前に残量をゼロにしよう」と再び充電したり、ケースを押して元の形に戻そうとしたりすることです。正常な製品と、すでに膨張・変形している製品では対応が異なります。

この記事では、モバイルバッテリーが膨らむ理由、発火につながる可能性がある異常サイン、膨張を見つけた直後にすること、処分までの一時保管、そして日本での正しい捨て方まで順番に解説します。

モバイルバッテリーが膨らんだら使っていい?

結論からいうと、膨張したモバイルバッテリーは使用を中止してください。

国民生活センターは、モバイルバッテリーに膨張が見られた場合はすぐに使用を中止し、交換または適切に廃棄するよう案内しています。変形・破損した状態で使用を続けると、発熱、破裂、発火につながる可能性があります。

「少し膨らんだだけ」「普通にスマートフォンを充電できる」という状態でも、安全であることを意味しません。

特に、平らな机に置いたときに本体が安定しなくなった、外装の合わせ目が開いてきた、ケースが内側から押されているように見える場合は注意してください。

膨らんだ部分を指で押したり、重い物を載せて平らにしたり、工具で分解したりするのも避けます。

なぜモバイルバッテリーは膨らむのか

モバイルバッテリーの内部には、一般的にリチウムイオン電池が使われています。

電池が劣化したり内部で異常な化学反応が起きたりすると、ガスが発生して内部にたまり、バッテリーが膨張することがあります。

原因は一つとは限りません。長期間の使用による劣化だけでなく、高温環境、落下や圧迫などの強い衝撃、充電時の異常など、さまざまな要因が関係します。

特に避けたいのが、真夏の車内や直射日光が当たる場所への放置です。リチウムイオン電池は高温の影響を受けるため、NITEや消費者庁も高温になる場所で使用・保管しないよう注意を呼びかけています。

バッグの中でも、重い荷物に長時間押される場所や、熱がこもる場所には注意が必要です。

発火の前に気づきたい危険サイン

モバイルバッテリーの異常は、膨張だけとは限りません。次のような変化がある場合も、使用を続けずに状態を確認してください。

  • 本体が膨らんでいる、変形している
  • ケースの合わせ目が開いている
  • 以前より充電中の温度が明らかに高い
  • 充電できない、または満充電になるのが異常に早い
  • バッテリー残量が急激に減る
  • 使用中に突然電源が切れる
  • 焦げたようなにおいがする
  • 薬品のような普段と違うにおいがする
  • 落下後にケースが変形した
  • 煙、異音、火花などが出る

特に「膨張+異常発熱」「膨張+異臭」など複数の異常が重なっている場合は、処分方法を調べるために何度も手に取ったり、持ち歩いたりせず、できるだけ安全な状態で保管してメーカーや自治体へ相談してください。

膨らんだことに気づいたら最初にすること

充電中に膨張へ気づいた場合は、まず充電を中止します。

ただし、すでに煙や火花が出ている、触れないほど熱くなっているなど危険な状態では、無理に手で持って移動させないでください。自分の安全を優先します。

通常の温度で、まだ発煙や発火が起きていない状態なら、紙、カーテン、衣類、布団など燃えやすい物から離しておきます。

NITEでは、異常を感じたモバイルバッテリーについて、発火した際の延焼を抑えるため、金属製の容器やふたのできる土鍋などに入れて保管し、販売店やメーカー等へ相談する方法を案内しています。

自宅に専用品がなくても、状態によってはふた付きの金属製容器などを一時保管場所として利用できます。ただし、これは「中に入れれば絶対に発火しない」という意味ではありません。あくまで処分先が決まるまで周囲への延焼リスクを減らすための一時的な対策と考えましょう。

膨らんだバッテリーでやってはいけないこと

もう一度充電して確認する

「本当に故障しているのか確認したい」と考えて再充電するのは避けてください。膨張そのものが異常のサインなので、動作確認のために電気的な負荷を加える必要はありません。

押して元の形に戻す

膨らんだケースを手で押す、テープできつく巻く、重い物を載せるといった方法も危険です。内部へ強い力を加えることで状態を悪化させる可能性があります。

穴を開けてガスを抜く

絶対に行わないでください。

膨張したリチウムイオン電池の内部には可燃性ガスがたまっている場合があり、外力によって内部が損傷すると発火するおそれがあります。分解や穴開けを自分で行うのは非常に危険です。

燃えるごみ・不燃ごみにそのまま入れる

これも避けなければなりません。

ごみ収集車では、ごみを圧縮する際に強い力が加わります。その中にリチウムイオン電池が混ざっていると、電池が破損して発火し、収集車や処理施設の火災につながることがあります。

発火してしまったらどうする?

モバイルバッテリーから煙や炎、激しい火花が出ているときは、無理に近づかないことが重要です。

NITEは、小型のモバイルバッテリーが発火した場合、まず安全を確保し、火花が収まった後で大量の水をかけて消火する方法を案内しています。消火後も内部に熱が残って再び発火する可能性があるため、冷却を続ける必要があります。

自分で対処するのが危険だと感じた場合や、周囲へ燃え広がっている場合は避難して119番へ通報してください。

「リチウムだから水をかけてはいけない」と思う人もいるかもしれませんが、一般的なモバイルバッテリーなどの小型リチウムイオン電池については、NITEや消防関係機関が大量の水による消火・冷却を案内しています。

ただし、煙や炎が激しく噴き出している最中に、危険を冒して近づく必要はありません。

膨らんだモバイルバッテリーの正しい捨て方

ここで最も重要なのは、「全国共通の捨て方はない」という点です。

リチウムイオン電池の回収方法は自治体によって異なります。回収日を設けている自治体もあれば、清掃施設への持ち込みを求める地域、販売店などの回収を案内している地域もあります。

さらに、通常状態のモバイルバッテリーと、すでに膨張・破損しているモバイルバッテリーでは回収方法が異なる場合があります。

そのため、住んでいる自治体の公式サイトで「自治体名 モバイルバッテリー 捨て方」「自治体名 リチウムイオン電池 膨張」などと検索して確認してください。

例えば東京都豊島区では、2026年4月から小型充電式電池を「金属・陶器・ガラスごみ」の収集日に集積所で回収しています。通常のモバイルバッテリーは端子をテープなどで絶縁し、ほかのごみとは別の透明・半透明の袋に入れて表示して出す方法が案内されています。

一方、膨張したモバイルバッテリーは集積所には出せず、指定された窓口へ持ち込むよう案内されています。

このように同じ東京都内でも自治体によって対応が異なるため、「東京ならこの方法」と一括りにせず、自分が住んでいる市区町村の最新情報を確認することが大切です。

回収ボックスならどこでも入れていい?

家電量販店などに設置されている小型充電式電池の回収ボックスを思い浮かべる人も多いでしょう。

一般社団法人JBRCの協力店などで回収されている製品もありますが、膨張、破損、水ぬれなど異常のある電池は通常の回収対象にならない場合があります。

膨らんだモバイルバッテリーを見つけたら、回収ボックスへ直接入れるのではなく、まず自治体、メーカー、販売店などへ状態を伝えて確認してください。

処分までの間にあると便利なもの

膨張したバッテリーのために高価な専用品を必ず購入しなければならないわけではありません。

NITEでは金属製容器や土鍋などを利用した一時保管方法が案内されています。そのため、自宅にふたのできる金属製の容器があれば、新たに専用品を購入する必要がない場合もあります。

端子が露出している正常な使用済みバッテリーを自治体のルールに従って出す場合には、短絡防止のためビニールテープなどで端子を絶縁するよう求められることがあります。

ただし、膨張した本体全体をテープできつく巻き付けたり、形を戻そうと圧力をかけたりしないでください。絶縁処理と本体を締め付けることは別です。

ふた付きの金属容器を自宅に用意しておけば、異常を見つけてから自治体やメーカーへ持ち込むまでの一時保管に利用できます。

ただし、商品説明に「耐火」「防火」などと書かれていても、あらゆるリチウムイオン電池火災を完全に防げるとは限りません。商品名だけで安全性を判断せず、容器そのものよりも「異常なバッテリーを長期間家に置かない」ことを優先してください。

買い替えるモバイルバッテリーは何を確認する?

膨張した製品を処分した後に新しいモバイルバッテリーを購入するなら、容量や充電速度だけで選ばないことも重要です。

まず確認したいのがPSEマークです。日本で販売されるモバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象となっており、対象製品ではPSE表示を確認できます。

さらに、メーカー・販売事業者の情報が確認できること、問い合わせ窓口があること、リコール情報を確認できることも選択基準になります。

容量については、日常の外出でスマートフォンを補充電する程度なら10,000mAh前後が選択肢になります。一方、旅行や災害対策などで複数回充電したい場合は20,000mAhクラスもありますが、容量が増えるほど本体は重くなる傾向があります。

新しい製品を購入したからといって、古いモバイルバッテリーを「予備」として引き出しに残すのは避けたいところです。すでに膨張しているものはもちろん、長期間使っていない製品も、ときどき外観を確認してください。

モバイルバッテリーを長持ちさせるために

バッテリーは消耗品なので、永久に同じ性能を維持することはできません。それでも日頃の扱い方によって、事故につながるような状態を避けやすくなります。

  • 炎天下の車内へ放置しない
  • 直射日光が当たる場所で長時間充電しない
  • 布団や衣類の中など熱がこもる場所で充電しない
  • 落下や強い圧迫を避ける
  • バッグの底で重い荷物に押しつぶされないようにする
  • 充電中はときどき本体の状態を確認する
  • 就寝中や外出中の充電をできるだけ避ける
  • 異常な発熱・膨張・異臭を感じたら使用を中止する
  • メーカーのリコール情報を確認する

特に夏は注意が必要です。NITEの事故情報では、リチウムイオン電池搭載製品の事故件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増える傾向があり、8月にピークを迎えています。

車でモバイルバッテリーを使う人は、「必要なときに使うから」とダッシュボードや車内収納へ常備したままにしないよう注意しましょう。

こんな人は買い替えを考えたい

現在のモバイルバッテリーに膨張、異常発熱、変形、異臭などがある場合は、買い替え以前にまず使用を中止して適切に処分する必要があります。

また、外観に異常がなくても、以前より極端に容量が減った、充電が不安定になった、落下させて外装が変形したといった変化があれば、メーカーへ相談するか交換を検討してください。

反対に、問題なく使えている製品を「数年たったから」という理由だけで慌てて捨てる必要はありません。製品の取扱説明書やメーカーの案内を確認し、外観や充電時の状態を定期的にチェックすることが大切です。

よくある質問

少しだけ膨らんでいる程度なら使えますか?

使用しないでください。膨張の程度だけで安全性を判断することはできません。膨らんでいること自体が異常のサインなので、充電・使用を中止し、メーカーや自治体へ相談してください。

残量が残っているので使い切ってから捨てたほうがいいですか?

正常な電池については、自治体などが処分前に可能な範囲で残量を減らすよう案内している場合があります。しかし、すでに膨張・変形・異常発熱している製品を放電目的で再び使用するのは避けてください。異常品は使用を中止し、その状態を自治体やメーカーへ伝えて処分方法を確認しましょう。

冷蔵庫に入れておけば安全ですか?

おすすめできません。食品を保管する場所へ異常なバッテリーを入れる必要はありませんし、急激な温度変化や結露も避けたいところです。直射日光や高温を避け、周囲に燃えやすい物がない場所で、必要に応じて金属製容器などを使って一時保管してください。

膨らんだ部分に穴を開ければ元に戻りますか?

絶対に行わないでください。内部を損傷させると発火する危険があります。分解、穴開け、押しつぶしは避けてください。

家電量販店の回収ボックスへ入れてもいいですか?

膨張・破損したバッテリーは通常の回収対象外となる場合があります。勝手に回収ボックスへ投入せず、店員、メーカー、自治体などへ状態を伝えて確認してください。

燃えないごみの日に出せば大丈夫ですか?

自治体によって異なります。リチウムイオン電池が通常の不燃ごみに混ざると、収集車や処理施設で火災につながる可能性があります。必ず住んでいる市区町村の最新ルールを確認してください。

旅行前に確認したほうがいいことはありますか?

本体の膨張・変形・異常発熱がないか確認してください。異常があるモバイルバッテリーを旅行へ持っていくのは避けましょう。また、飛行機ではモバイルバッテリーの持ち込み方法や個数・容量などにルールがあるため、利用する航空会社の最新案内も確認してください。

まとめ

モバイルバッテリーが膨らんでいることに気づいたら、「まだ使えるか」を試すのではなく、使用と充電を中止することが第一です。

押して元に戻す、穴を開ける、分解する、再充電する、一般ごみへ混ぜるといった行動は避けてください。

処分まで一時的に保管する必要がある場合は、周囲の可燃物から離し、NITEなどが案内している金属製容器や土鍋などを利用する方法があります。そして、できるだけ早く自治体、メーカー、販売店へ処分方法を確認します。

また、モバイルバッテリーの捨て方は全国一律ではありません。特に膨張・破損した製品は、正常な使用済みバッテリーとは回収方法が違う場合があります。

毎日持ち歩いていると外観の変化には意外と気づきにくいものです。スマートフォンを充電するときに「以前より熱くないか」「ケースが浮いていないか」「変なにおいがしないか」をときどき確認するだけでも、異常を早い段階で見つけやすくなります。

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